本校舎と旧校舎を繋ぐ渡り廊下の途中で、吹き抜ける風を楽しむように、カンナがくるっとスカートで円を描く。

親しげな呼び方に、もう落ちたのか、と目を細めてしまったが、なんとか言葉は飲み込んだ。


「イイ、って何が?」

「委員をクジで決めたりさ、『人生には運も大事ですからね』って! もう、ひたすらカッコイイ!」


ただでさえ大きな瞳が、やたら眩しい。


「無難な委員だったから言えるんだよ。もし教科担当とか引いてたら、絶対恨んでたって」

「芙由は白紙だもんねー」


カンナが挑発的に笑うので、旧校舎の入り口に差しかかったタイミングで体を寄せ、進路を妨害する。


カンナが言った白紙とは、人数調整のために2枚だけ入っていた、“アタリ兼ハズレ”のジョーカーだ。何の委員にも属さない代わりに、欠席時の全代理を担う係ってやつ。

今日の2限目に行われた委員決めで、私はそれを見事引き当てた。


「いいよねカンナは。文化祭の実行委員って、期間限定じゃん」

「イライラしなーい! それよりホラ、穴場到着!」


なにかと未だに使われているらしく、古めかしくも小綺麗な校内。どこまで行くんだろう、と半ば不思議に思いながら登りきった階段の先の終着点。


――カンナの最終手段とは、旧校舎の屋上だった。


勿体ぶるようにカンナがゆっくりとドアを開けると、遠くで聞こえる喧騒とともに、温かな春風がフワッと通り過ぎる。


視界いっぱいに広がる青空。フウーッと大きく息を吐ける空間。私は、順風満帆な高校生活を思って心が弾んだ。



「ねぇ、何でカンナはこの場所知ってたの?」