高校生活1日目の今日は、各々の自己紹介からはじまり、事務的なホームルームが続いた。今後の日程確認、委員決め、校内の案内。そして、明日から行われる宿泊研修の説明。


午前中のみの短縮授業が終わると、教室内では少人数のグループがいくつも生成されていく。

午後は、高校生活の基盤を作る貴重な時間だ。もちろん私とカンナにも、このあと大切な任務が待っている。


「準備完了。いつでも行けるよ」

「こっちもオッケーッ! 行くべっ!」


帰り支度を整えてカンナの席へ向かうと、親指を立てながら、なんとも勇ましい反応が返ってきた。


軽やかな足取りで3階分の階段を下り、まずは購買部へ立ち寄る。サンドイッチ2種類と5個入りのミニクロワッサン、カフェラテ2本を無事購入できたら次へ。


今日の任務は題して、私達の憩いの場所を見つけよう――だ!




限られた敷地の中で、自分達だけの場所を見つけるのはラクじゃない。そんなことは始めから覚悟していた。だからこそ、上級生が通常通りに過ごしている今日が、捜索にはうってつけだった。


中庭や屋上といった定番スポットは、やはり満員御礼。校舎裏はカップルが占拠中。目ぼしい場所を探りながら敷地内を一周した私達は、……結局、昇降口へ戻って来てしまった。


「しかたない……最終手段だよ、芙由」

「え、何それ?」

「とりあえず行くべ!」


自信満々な顔で言い放ったカンナが、その勢いのまま背を向けて走り出す。


一体どこへ向かう気なのか。こうなったら、ふわふわと波打つオリーブカラーのロングヘアを追うしかない。


「ねーねー、春先生ってイイよね」