8時前に乗り込んだアムトラックがワシントンのユニオン駅に着いたのは11時30分だった。
 そこから地下鉄に乗り換えて、スミソニアン駅で降りた。

「スミソニアンって何があるところか知ってるかい?」

 ルチオの問いに弦は首を振った。
 名前だけは聞いたことがあるような気がしたが、具体的に知っていることは何も無かった。
 正直にそれを告げると、すかさずアントニオが訳知り顔で説明を始めた。

「一般的には博物館が有名だけど、それだけじゃないんだ。色々な美術館があるし、研究施設や動物園や彫刻庭園まであって、全部で19もの施設があるんだよ。今日は時間が無いから見学はできないけど、いつか行ってみたらいい。但し、全部見るためには2日ほど泊まる必要があるけどね」

 更に、年間予算が10億ドルを超えていると聞いて余りのスケールの大きさに圧倒されそうになったが、「さあ行こう」とルチオが歩きだしたので、弦は慌ててそのあとを追いかけた。