10日後、航空便が弦の元に届いた。
 箱の中には色々な本が入っていた。
『あんパンの作り方』というピンポイントのもの、『日本全国パン巡り』という各地の有名店を紹介するもの、『世界のパン事情』というワールドワイドなもの、それに、『パンの歴史』というアカデミックなものまで入っていた。

 弦は早速それらを読み始めた。
 ブレッドのCDをかけながら読み続けた。
 付箋紙を貼りながら読み続けた。
 そして何度も読み返した。
 それでも飽きることはなかった。
 それはパンの幅広さと奥深さに魅せられた証だった。

 面白い!

 3日間読み続けて独り言ちると、躊躇わずにスマホを取った。
 すぐに奥さんが出たのでアントニオに代わってもらって用件を告げると、喜ぶ声が返ってきた。

「よろしくお願いします」

 スマホを持ったまま頭を下げた。