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 自分の部屋に戻った弦は時差を計算してから、夜まで待って母親に電話をかけた。

「パンの本?」

 母親が怪訝そうな声を出した。

「そう。あんパンとかクリームパンとかカレーパンとか、そういうもののレシピや作り方が書いている本を送って欲しいんだ」

「急にどうしたの?」

 弦はベーカリーでアルバイトをすることを伝えた。

「どうしてベーカリーで?」

 母親は合点がいかないようだったが、「そういうことになったの」とスパッとその話を終わらせた。

「とにかく、日本発祥のパンのつくり方が書かれた本をすぐに送って欲しいんだ。船便じゃなくて航空便で送って」
 母親が何か言う前に弦は電話を切った。