「豆をこうやって洗って……」

「それから、こういうふうに煮て……」

「そして、火を止めて10分ほど蒸らす」

「それから、こうやって渋切りをして……」

「次はたっぷりの水でヒタヒタと煮る」

「沸騰したらコトコト煮て、水が減ったら注ぎ足してヒタヒタ煮る……」

「いい感じになってきたら、指の腹で豆を潰して状態を確認する」

「アチッ!」

 アントニオの悲鳴が聞こえたと思ったら、すぐに水道水で指を冷やし始めた。

「ごめんなさい。これを先に言えばよかった」

 謝ってから続きを読み上げた。

「その時に火傷をしないように気をつける。指を水につけてからマメを潰すとよい」

 もう~、というような表情でアントニオに睨まれたが、それは一瞬のことで、すぐに自嘲気味に笑った。


「俺としたことが……」
 バツが悪そうだった。
 なにしろルチオが傍にいるのだ。
 初歩的なミスが恥ずかしかったに違いない。

 弦も決まりが悪かったが、頭を下げて仕切り直しをしてから先を続けた。

「いい感じに煮えたら火を止めて蓋をする」

「30分ほど蒸らすと均一にふっくらとしてくる」

「これで良しと判断出来たら煮汁を捨てる」

「次はあんこを練る工程」

 アントニオが新しい鍋を用意したのを見て弦が続けた。

「水を入れてから砂糖を溶かす」

「半分ほど溶けたら豆を入れて火にかけて練る」

「10分くらい練ると丁度良いくらいに出来上がる」

「それを別の容器に移して粗熱を取る」

「保存する場合はラップをする」