収穫の時を迎えた。
 女と男は草原の麦の実を大量に持ち帰り、石で潰して食べた。
 しかし全部は食べず、残した実を住まいの裏に撒いて足の裏で踏み付けた。

 また年が明けた。
 住まいの裏では麦が芽を出していた。
 女はヨチヨチ歩きの幼子の世話をしながらその成長を楽しみに見守った。
 そして実りの時を待ち続けた。

 好天に恵まれた春が過ぎ、待ちに待った初夏が訪れた。
 住まいの裏には数多くの麦が穂を付けていた。
 それを見せると、男は大喜びして飛び上がった。
 もう草原との間を何度も行き来する必要がなくなったからだ。
 これほど嬉しいことはなかった。

 女の知恵に恐れ入った男は更に女に優しくなった。
 すると、女の腹に新たな命が芽生えた。
 その後も次々と新しい命を授かり、その命を養うために更に多くの麦の実を撒いた。