「あっ、これって」

 アントニオの顔が一気に綻んで、「出してもいいかな?」と言うや否やテーブルに並べ始めた。

「これがあんパンで、こっちがジャムパン、そしてこれがカレーパンで、これはメロンパン。そしてこれが総菜パン」

 弦の説明が終わるとすぐにあんパンを手に取って半分に割り、じっと中のあんを見た。

「つぶあんです」

「ツブアン?」

 弦は〈つぶあん〉と〈こしあん〉の見た目の違いを説明した上で製法についてはよくわからないと正直に告げたが、しかしそんなことはどうでもいいというようにパンを更に半分にして口に運んだ。

「う~ん♪」

 一気に頬が緩んだ。
 それを見たアンドレアがアントニオの手から残りのあんパンを取って口に入れた。

「うちのパンとは全然違うね」

 でもいける、というような顔をしていた。

「とってもおいしい」

 アントニオの奥さんがかなり気に入ったというようにブオノの仕草をした。

「うん、私にはちょっと甘すぎるけど、でも悪くない」

 ルチオの顔は真剣だった。
 味蕾をフルに働かせて味分析をしているみたいだった。

 それからあとはカレーパンの甘辛さやジャムパンの甘さと酸味のバランスの良さに驚き、メロンパンの表面の格子柄がマスクメロンに似ていると騒ぎ、焼きそばとパンの組み合わせにあんぐりとし、ワイワイガヤガヤと賑やかに試食タイムが終わった。