弦はその後何度もその映像を見ることになった。
 毎年惨事の時期になると必ずテレビで放映されるからだ。
 その度にあの日の悪夢が蘇ってきた。
 忘れもしないあの日……、

 2001年9月11日、午前8時45分。
 アメリカン航空11便が高層ビルの外壁に突入し、93階から99階が火を噴いた。
 ワールドトレードセンター北タワーだった。
 その18分後、ユナイテッド航空175便が南タワーに突入し、77階から85階が火を噴いた。
 その56分後、南タワーが崩壊した。
 更に29分後、北タワーも崩壊した。
 それだけでは済まなかった。
 隣接する二つのビルが崩壊しただけでなく、更に三つのビルが甚大な被害を受けた。
 
 飛行機の乗員・乗客147名は即死し、ワールドトレードセンターのツインビルで働く17,400人のうち2,192人が亡くなった。
 隣接するビルや近くにいた人も巻き添えになった。
 救助や消火に当たった71人の警官と343人の消防士も命を落とし、総計3,000人を超える尊い命が失われた。
 その中には日本人が24人含まれていた。

 世界は悲しみに沈み、闇が覆った。