「お疲れさん」

 サンドロの発声で乾杯すると、彼は一気にビールを飲み干し、お代わりを頼んだ。

「君たちは真面目だね」

 コークを飲む2人に信じられないというような視線を向けたサンドロは、16歳の時からお酒を飲み始めたことを当たり前のように言ってから、「今は法律が変わって18歳になったけどね」と誘い水のようなものを投げてきた。

「うん、それは知ってるけど……」

 アンドレアは少し躊躇った様子だったが、サンドロの誘いには乗らなかった。
 イタリアの法律では問題ないにしても、酒の味を覚えてニューヨークに帰ったら大変だからというのが理由だった。
 ニューヨークの飲酒可能年齢は21歳だと言ってきっぱり断った。

「弦はどうする?」

「どうするって……」

 アンドレアに付き合うしかなかった。
 自分だけビールを飲むわけにはいかなかった。
 日本ではなくニューヨークでもなくイタリアなのだから少々羽目を外したいという気持ちはあったが、ぐっと堪えた。

「まあ、無理強いはしないけどね」

 運ばれてきたビールをうまそうに飲んで、プハーと息を吐いた。