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 時は経ち、小麦の栽培が古代エジプトへ伝わった。

 それに連れてメソポタミアで考案されたパンの作り方も伝えられた。

 女たちはサドルカーンと呼ばれる原始的な(うす)()いた小麦粉を水でこねるのが日課になった。

 それを石の炉で焼いて食卓に出すと、夫も子供も我先にと手を伸ばした。

 それはただ焼いただけの素朴なものだったが、それで十分だった。
 小麦粉と水と火があればいつでも作れるパンは貴重な食料として生活に欠かせないものとなった。