原宿なぎさが高校に入学して、まだそれほどでもなかった。まだ春。春風が吹いていた。自宅から通学している。その途中、ひとけのない公園があった。
 ある日の放課後。なぎさはいつものように帰っていた。なぎさは耳の上ツインテール、ラビットスタイル。なぎさは白いブラウスに茶色のノースリーブワンピース。ブラウス襟から白いリボンタイ。ローファーをはいている。靴下は黒のハイカット丈。合皮バッグの茶色のスクールバッグを持っている。白い腕時計をしている。
 空には雲が敷きつめられ、肌寒かった。
 なぎさは、自由学園高等学校と彫られた校門をでた。なぎさは家へ向かって歩き出した。ひとけのない公園に通りがかった。しかし、今日は珍しく人がいた。
 え、となぎさは思った。なぎさは、公園をのぞいた。なぎさと同じ制服の女子高生が数人いた。同じ学校の人だ、となぎさは思った。なぎさは公園に入って行こうとした。
 「おい、お前ウルフちゃんやるなっていったじゃん」
 と大声が聞こえた。え、喧嘩?なぎさは公園の大木の陰にそうっと隠れた。見ると、金髪(ブロンド)の男子がいた。女子高生に囲まれているのだ。
 「誰だろう、芸能人かなあ」
 と、なぎさはひとりごちた。男子は背が高かった。金髪(ブロンド)のさらさらヘアの長髪。切れ長で青い瞳。鼻筋が通って、上唇が薄い。フェイスラインはシャープ。美少年だ。肩はがっしりしていた。茶色のブレザー姿。ネクタイをしている。キレイな顔だ。なぎさはうっとりした。まるでモデルさんみたいだ。
 女子がうっとりするようなタイプだあ、なぎさは思った。
 「なんでまだウルフちゃんやってんだよお」
 と、女子高生。
 「なんでって」
 と、男子。
 「ウルフちゃんやめてほしいんだ」
 と、女子高生。
 (あの人もウルフちゃんやってんだ)と、なぎさ。
 「なんで」
 と、男子。
 「え」
 女子高生が止まった。
 「あ、いや、なんでって、お前みたいな美少年が・・・・・・」
 「美少年が?」
 と、男子。
 「あ、いやだからお前みたいな美少年があ・・・・・・」
 「で?」
 と、男子。
 「ふはあ」
 と、女子みんなが言った。
 「いやだあかあらあ、お前みたいなやつが書くもんじゃない、つってんだよお」
 「えええええええええ。そうだったのか。僕みたいなのが書くものじゃなかったんだ」
 と、男子。
 なぎさは思わず笑った。
 「え」
 と、女子高生たちはきょとんとした。
 「あ、いやわかればいいんだ」
 「というわけでえ、ウルフちゃんはやめる?」
 「なんで?」
 と、男子。
 「えええええええええええええ」
 女子高生が一斉にいった。
 「え、なんでそうーなるのっ?」
 「え、なんでって」
 と、男子は考え込んでいる様子。
 「あは、わからない」
 と、男子はいって片手を後頭部にやった。
 「ああああああああ」
 女子高生たちは芸人のようなずっこけるそぶりを見せた。なぎさは笑った。
 「かっこいいのに何で書くんだ?」
 と、女子。
 「なんでやろうなあ」
 といって男子は片手を後頭部にやった。
 「あ、いやこっちが聞いてんだよ」
 「お前みたいな性格悪いやつがなんでだ」
 と、女子高生はきっぱりいった。
 「僕って性格悪いんだ」
 と、男子。
 「そう、性格ワルがなんでだ」
 「うわあ、なんかショック」
 と、男子。
 「うわあああああ」
 女子高生は芸人さんの要領でずっこけるそぶりを見せた。
 「お前みたいな性格悪い奴がウルフちゃんやってると思うとだなあ」
 と、女子高生。
 「そりゃあ、悪かったよ」
 と、男子。
 「え」
 と、女子高生たちはきょとんとした。
 女子高生の一人が咳払いしていった。
 「わ、わかればいいんだ」
 「うん」
 と、男子。
 「ほお、じゃあ、ウルフちゃんはやめるということで」
 「なんで」
 と、男子。
 「あ、いや、やめねえのかよ」
 「うん」
 と、男子。
 「て、てめえ」
 と、女子高生。
 「もういい」
 と、リーダーのような女子高生がいった。背の高い茶髪の巻き髪の髪の長いこだった。