「喉が乾いたでしょ。はい、スパークリングウォーター」
「ありがとうございます」

テラスに出て火照った身体を休めていると、カルロスが近づいて来てプリムローズにグラスを手渡す。

「ねえ。もうすぐ十八になるって言ってたけど、いつなの?誕生日」
「え…」

突然の話題に、プリムローズは言葉に詰まる。

「今月でしょ?君の誕生日。何日なの?」
「あ、はい。十五日です」
「ええ?!十五日って、今日だよ?」
「はい…」

消え入りそうな声で頷くプリムローズを、カルロスはまじまじと見つめる。

「そうか、聞いてよかった。誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。もったいないお言葉でございます」
「いや。それより、君はどうしてここにいるんだい?父上が君に用があると言っていたけど。誕生日もこんなところで、誰にも祝福されずに過ごすつもりだったの?」
「それは、その。わたくしも国王陛下のご意向を図りかねておりまして」
「ふうん…。まあ、おおよそのところ、俺の花嫁候補ってところだろうな」

え?と、プリムローズは思わず顔を上げる。

「君と同じだよ。俺もそろそろ結婚を急かされる年齢なんだ。見合いの話はことごとく断ってきたけど、一つ屋根の下に住まわせるっていう、更に強気の作戦なのかもしれない。ま、俺だっていつかは身を固めなきゃと思ってるけどね」

そう言うと、プリムローズの手からグラスを取り上げて近くのテーブルに置いた。

「結婚相手は誰でもいいと思っていたけど、考えが変わった。結婚するなら君がいい」

プリムローズは何が起こっているのか理解できずに、ただカルロスを見つめ返す。

すると急にカルロスが切なげな表情になり、身をかがめたかと思った刹那、プリムローズの唇にキスをした。

ハッとして、プリムローズは慌てて後ずさる。

「ごめん、思わず…。でもそれだけ本気なんだ。考えて欲しい、俺との結婚を」

そう言い残し、カルロスは去っていく。

プリムローズはただ呆然とその場に立ち尽くしていた。