ノルードは偶然場に居合わせたイルヴァド、さらにはネセリアも呼んで、ルルメリーナの相談を受けることにした。
 相談の内容は、将来のことだということはわかっている。それはノルードにとっては、意外なことだった。ルルメリーナは、そういったことなどは気にしていないと思っていたからだ。
 それが失礼なことであることは、ノルードもわかっている。ただ長年の付き合いから、どうしてもそう思ってしまうのだ。

「それでルルメリーナ様、将来のことについて悩んでいるということで、よろしいのでしょうか?」
「うーん、まあ、そうかなぁ?」
「えっと、ご自身でもわかっていないのでしょうか?」
「そうかも」

 ノルードの質問に、ルルメリーナは端的な答えを返してきた。
 やはり今まで、そういったことは考えてこなかったのだろう。自身の悩みについて、そこまでよくわかっていないようである。
 そこでノルードは、少し考えることになった。一体何故、ルルメリーナが将来のことで悩み始めたのかということを。

「もしかして、リフェリナ様のことでそのようなことを?」
「え? あーあ、そうかも」
「なるほど、つまり婚約などについて悩んでいるということですか? ルルメリーナ様も、何れはそうなる訳ですし」
「うんうん。多分、そうだと思う」

 ノルードの言葉に、ルルメリーナは嬉しそうに頷いていた。
 他のことで悩んでいた可能性もあるが、ノルードはとりあえずその反応を信じることにする。

「しかし婚約のことですか……それは中々難しい問題ですね」
「そうなのぉ?」
「……ええ、私やノルードは、その辺りのことについてはそれ程詳しい訳ではありませんから」
「まあ、お二方は貴族の家系ではありますが、直系ではありませんからね。そういったことはわからないのでしょう」
「へー、それなら……」
「うん?」

 そこでルルメリーナは、イルヴァドのことを見つめていた。
 使用人である二人にはわからないことではあるが、この場にはウェディバー伯爵を受け継いだ者がいる。そのことにルルメリーナも気付いたのだろう。

「イルヴァド様が、相談に乗ってくれるんですかぁ?」
「え? ああ、まあ、そういうことになりますか」
「まあ、可愛い妹の頼みなんですから、聞いてくださいよぉ」
「……わかりました。僕で良いのなら、お聞きします」

 ルルメリーナの言葉に、イルヴァドは微妙な表情をしていた。
 その言葉を無下にすることはできないが、答えられる自信がないとった感じだ。
 それにノルードとネセリアは、苦笑いする。ルルメリーナの相手をすることが大変なことは、二人もよく知っているのだ。