「……お兄様の婚約者として考えられる性格は、二つですかね」
「なんだ急に?」
「いえ、少し考えてみたんです。お兄様はどんな人と仲良くやっていけるかって」

 少し考えた結果、私はお兄様と上手くいきそうな性格を思いついた。
 妹である私は、お兄様のことをかなり知っているつもりだ。この予想はきっと、間違ってはないはずである。

「まず一つ目ですが、明るい人ですね」
「……リフェリナ、お前が何を言っているのか俺にはよくわからないのだが」
「お兄様はクールな方ですからね。ただ、少し消極的な面があると思います。そういった所を引っ張ってくれるそこはかとないくらい明るい人なんかは、良いのではないでしょうか?」

 明るい性格の人は、お兄様との相性も悪くはないはずだ。
 私やルルメリーナのこととなると話は別だが、お兄様は物事にそこまで積極的な訳ではない。
 その辺りを引っ張ってくれる明るい人なら、上手くやっていけそうだ。なんだかんだ言って、お兄様もそういうタイプは嫌いではないはずである。

「もう一つは、逆にクールな人でしょうか?」
「リフェリナ、少し待て」
「冷静で沈着な人とは、似た性格である訳ですから、きっと話は合いますよね。足並みを揃えて、歩いていけそうです」

 冷静な性格の人も、良いと思っている。
 単純に、同じような性格の人とは合うだろう。お兄様は基本的には静かな方が好きな人であるだろうし、平和な日々が送れるのではないだろうか。

「別に俺と合う合わないという話は、どうでもいいことだろう。問題は、家同士の関係性の方にある。婚約とはそういうものだ」
「それで私は失敗しましたから、お父様もどちらかというと相性を考慮するのではないでしょうか? 結局の所、仲違いしてしまったら意味がない訳ですから」
「まあ、確かに一考の余地はあるのだろうが……」
「大体、お兄様はただでさえ少々気難しい所があるのですから、そこは気にするべきことだと私は思います」
「……そんなにか?」

 お兄様の表情には、少し陰りが見えた。少し言い過ぎてしまっただろうか。
 ただ、今いったことは紛れもない事実である。お兄様に合わせられる人と婚約できる方が、絶対にいいはずだ。その方が、最終的には上手くいくだろう。

「まあ、実の所心当たりがないという訳でもないのですけれどね」
「……何?」
「それについては、どうなのでしょうね?」
「俺は何を言っているのか、わからないのだが……」

 お兄様の婚約相手として相応しい人に、心当たりがないという訳でもなかった。
 その人物なら、絶対に上手くやっていけるとは思う。ただ問題は、その婚約が成立するかどうか怪しいということなのだが。