ルルメリーナが不在ということもあって、私はお兄様と二人きりでお茶会をしていた。
 ルルメリーナも含めて、私達兄妹は仲が良い。そのため、時々三人で集まることもある。
 そういった時は、基本的には他愛もない話をすることが多い。ただ今回は、ルルメリーナが不在ということもあって、彼女の話ということになった。

「実際の所、ルルメリーナの婚約者探しなどは大変だろう」
「まあ、人気がありますからね。敵も多いですけれど」
「父上もそれに関しては頭を抱えているだろう。良い相手を見つけられるとも限らない」

 お兄様は、少し嬉しそうに笑みを浮かべていた。
 恐らく、妹が嫁に行かないことを喜んでいるのだろう。
 ただ、なんだかんだ言って、お兄様はルルメリーナを結婚させたいと思っているはずだ。それが私達貴族の娘の役割である訳だし、お兄様の根本にもそういった考えはあるだろう。

 しかし、お兄様は自分が認める人でなければ大いに反対するはずだ。
 アデルバ様と私の婚約の時は、乗り気でない程度だったが、あれで一度失敗した以上、お兄様の反発は強まりそうなものである。

「ルルメリーナと婚約したいと思っている殿方自体は、多いと思いますけれどね」
「ふっ、その者達は所詮見た目に惹かれているだけの者達だ。ルルメリーナの内面を知って、その者達が馬鹿げたことをする可能性もある。見た目だけに惑わされるような者と婚約させるなど、やめておいた方が良いだろうな」
「まあ、それはそうですが……」

 私の言葉に、お兄様は早口で答えてきた。
 やはり、ルルメリーナの婚約者に対して求めているものは多そうだ。もちろん、内容には私も概ね賛成ではあるのだが。

「でも、婚約の話というとお兄様の方も問題ではありませんか?」
「む……」
「次期当主であるお兄様は、身を固める必要があるはずです。まさかお嫁さんを迎えるつもりがないなんて言いませんよね?」
「それはもちろん、そうではあるが……」

 話を少し変えようと思って私が言葉を発すると、お兄様はゆっくりと目をそらしてきた。
 その話は、あまりされたいものではないらしい。お兄様は、自分の婚約者についても何かしらのこだわりがあるということだろうか。

「何かしら理想などがあるのですか? そういった話が、お父様から出なかった訳でもないでしょうし……」
「俺にも俺の考えがあるというだけだ」
「自分の時にだけ、話をそらして。妹に先を越されているんですから、もう少し焦るべきではありませんか?」
「それについては、返す言葉もない、な……」

 お兄様は、いつになく弱気であった。
 婚約というものは、結構な悩みの種であるらしい。
 それなら、私の方で考えてみるとしようか。お兄様に相応しい人とは、どんな人かを。