「筋書きとしては、カルメア様は愛する人との間に作ったアデルバに、なんとしても伯爵家を継がせたかった。ということになります。そのために色々と非道な真似も働いたということで。今回の武器の発注なども、その一環です。それらを婚約したルルメリーナに押し付けたと」
「……なるほど、そういう風になりますか」
「それによって、あの二人のことを追い出します。そして、イルヴァド様を新たなウェディバー伯爵に据えます」

 私は、イルヴァド様に計画を説明していた。
 彼は、それを特に表情を変えずに聞いている。曲がりなりにも、血の繋がった母と半分血のつながった兄を追い出す話なのだが、特に思う所はないようだ。
 そういった所は既に、割り切っているということだろうか。今のイルヴァド様は、とても冷たく鋭く見える。

「こちらには権利書という切り札がある訳ですから、あの二人がどのような主張をしても無駄です。この力関係を覆すことなどはできません」
「ええ、彼らが権力を及ぼせる全ての者達が、ラスタリア伯爵家に従うでしょう。というよりも、あの二人には最早権力などというものはない……もっとも、それは今僕も同じことですが」

 ウェディバー伯爵家の領地などに関する権利書は、未だにルルメリーナが所有している。
 お母様は、用心深い人だ。故にこの件が終わるまで、イルヴァド様に渡すつもりなどなはないのだろう。
 イルヴァド様なら充分に信用できると思うので、その辺りは杞憂であると私は思っている。ただ彼の方も納得しているみたいだし、別に良いのだろう。

「そういえば聞いていなかったのですが、アデルバ様の本当の父親って一体誰なのですか?」
「ああ、そのことですか。ラスタリア伯爵夫妻やラヴェルグ様からは、聞いていないのですか?」
「あ、はい。口振りからして、三人には既に?」
「ええ、伝えています。当然、それらの証拠も今回の作戦の肝ですからね」

 そこで私は、アデルバ様の父親のことについて思い出した。
 その父親について、私はまったく聞いていなかったのだ。
 ただその辺りは、両親やお兄様は甘くない。きちんとイルヴァド様と話をつけているようだ。

「……ただそのことについては、ラスタリア伯爵も含めて話すべきかもしれませんね」
「え?」
「僕も後から知ったことがあるのです。そうですね……ラヴェルグ様にも、声をかけるとしましょうか? お二人は知っておいた方がいいことだと思いますから」

 イルヴァド様は、真剣な顔で私のことを見つめていた。
 どうやら、何か色々と事情がありそうだ。これは話を聞いておいた方が、いいかもしれない。