ルルメリーナとともに、ノルードとネセリアの二人もラスタリア伯爵家に戻って来ていた。
 二人は、ウェディバー伯爵家で妹を支えたりしてくれた功労者である。よって二人に対しても、大いに労わなければならない。

「いえ、ネセリアはともかく、自分は失敗ばかりでした。ルルメリーナ様を、きちんと支えられていたかは微妙な所です」
「そんなことはないよぉ? ノルードは、きちんと私のことをフォローしてくれていたし」
「しかし、余計なことをしたことも事実です。もちろん、結果的にそれが権利書などの件に繋がった訳ではありますが、それは結果論でしかありません」

 ノルードの方は、少し落ち込んでいるようだった。
 私からの労いの言葉を、彼は受け取ろうとしていない。何やら反省しているらしく、ずっと苦い顔をしている。

 どうやら何かしらの失敗があったようだが、それは別にそんなに気にするべきことなのだろうか。
 私としては、結果的に上手くいったのなら良いと思える。完璧にこなすということは難しいことである訳だし、致命的なミスでなかったのなら、特に問題はないだろう。

「まあ、ノルードさんはルルメリーナ嬢にずっとついていた。つまりは、あの母上や兄上の相手をしなければならなかったということですからね。あの二人は曲者ですから、仕方ない面もあると思いますよ。何やら訳がわからないことで、機嫌を損ねることもありますし」
「あ、そうそう。イルヴァド様の言う通り。アデルバ様もカルメア様も些細なことで怒るし、それはノルードのせいとかではないと思う」

 ノルードに対するイルヴァド様からのフォローの言葉に、ルルメリーナは乗っかった。
 イルヴァド様の発言は、身内だからこそ許されるものであると思うのだが、ルルメリーナにはそのような気遣いなどはわからないのだろう。
 とはいえ、イルヴァド様も特に表情は変えていないし、その発言にも問題はなさそうだ。それならノルードを立ち直らせるためにも、必要なものだったといえるだろうか。

「えっと、ネセリアの方はどうだったのかしら?」
「ええ、私の方は色々と調べさせてもらいました。様々な事柄に関する物証や、ウェディバー伯爵家の使用人達からの証言など、色々と得られるものはありました」
「流石ね」

 ネセリアの方は、色々と物証などを集められたようだ。それはきっと、既にお母様やお兄様に提出されているのだろう。
 ルルメリーナがもたらしたものが決定的過ぎるため、それらが必要かどうかは微妙な所だが、今回の戦いで有利に働くことは間違いないだろう。
 なんというか、盤石過ぎて怖いくらいだ。ウェディバー伯爵家――より正確にはカルメア様とアデルバ様の二人を、とことん追い詰めることができそうである。