それと、ひよりは危なっかしいところがあった。
「誰にでも分け隔てなく接する」と言えば聞こえはいいけれど、〝誰にでも〟すぎるのだ。 

 この学園は、特殊能力を持った人間・魔族と、何かしらに秀でた人間が在籍している。

 魔族はハッキリ言って危険人物だ。私含め。

 そして何かしらに秀でた人間は、よっぽどの天才か、英才教育を施された金持ち(ボンボン)の2択だ。
 ボンボンは気難しいやつが多いし、本気になれば家ごと青空ひよりを潰せるだけの力がある。だから刺激するのはあまりよろしくない。……そうして刺激しないようにしていたせいで学園が荒れたとも言えるわけだが。

 ひよりは誰にでも平等に接した。
 どんなに嫌なやつでも良いところを見つけた。
 たくさんトラブルもあったけれど、何があってもめげなかった。
 そうしてついにひよりは平和な学園を作り上げた。
 その過程で「ひよりにだけ心を許した人物」を大量発生させながら。

 うん。やっぱりすごいよ、ひよりは。
 私も少し、勇気を出してみようと思う。

 私はすごく嫌いだけど、能力面では優秀で、間違いなくひよりのことを大切に想っている彼に、協力を頼もう。

 ぐっと拳を握って、それから立ち上がった。
 目的地は、寮の隣の部屋。
 ほんの数か月前まではひよりと彼の2人がいた、今は彼だけが生活している部屋だ。

 もしかしたら、ひよりが急に「春休みに夕陽まむとともに帰省し、彼女を監視する」なんて計画を言い出した理由を、彼は知っているかもしれない。