「――と、いうわけなんだけど」
「なるほどねえ。どうりでなんか雰囲気が悪いわけだ」

 コミュ障ルームメイトとの、月に一度の交流会。
 私・光石(みついし)せいらが青空ひよりロスについての概要を語ると、彼女はふんふんと頷いて、それから首をかしげた。

「せいらはこの状況をどうにかしたいってことだよね?」
「そうね。でもまだ自分の学業と交渉術を頑張らないとかな」

 口ではそう言ってルームメイトに笑いかけるけれど、これはただの逃げだ。
 万が一、私が行動したことによって、ひよりの功績をムダにしたり、あるいはひよりが死んだと明らかになったりしたら、私はしばらく立ち直れない。

「それでせいらは後悔しないの? その様子だとちゃんと集中して勉強できてないでしょ。そんな努力で成績上がるとでも思ってる?」

 世の中についていけなくなるくらい打ち込んではじめて他人に差をつけられるんだよ、とルームメイトは言う。実際、生徒との交流を断ち切って常に勉強し続けている彼女は、テストの成績では他の追随を許さない。
 その頭脳があったら良い感じに嘘をつきつつコミュニケーションできそうに思うけれど、どうも彼女は本音を包み隠すのが嫌いなようで、こういう風に会話する場所を絞ったうえでそこでだけズバズバ言ってくる。
 彼女はむむむと唸りながら言葉を続けた。

「でも学園内で出来ることってのがあんまないよね。あれかな。どうせそれだけ慕われてるってことは、純粋にみんなの幸せを願ってた人なんでしょ。ってことは、青空ひよりに関する話をみんなから聞いて、彼女が学園の現状を知ったらきっと悲しむって思い出してもらって、彼女に胸を張れるような自分でいるために頑張ろう! 的な流れに持っていくとか」

 ルームメイトの言葉に、私は頷く。

「……そうだね。私はずっと、誰かにそう言われたかったんだと思う」

 そうと決まれば、まずは自分に問うてみよう。


 ひよりが失踪するきっかけとなってしまった、罪滅ぼしのためにも。