しぶしぶ夕陽まむを玄関へ招き入れ、話を盗み聞きされないよう魔法で結界を施す。

「ええと、まず、あたしとあなたのおにーさんと学園長が明日シメられて、白銀家の次期当主があなたになるってことは伝えておくわ」
「……は?」

 ちょっと意味がわからない。

「あたしの魔法が解けたならわかるでしょ? あたしがいろんな人に魔法をかけて、逆ハーレムを作って、いろんな人の人生を滅茶苦茶にしたこと。――あれ、全部あなたのおにーさんの指示だったの」

 実家がすごくお金に困ってた頃に、大金をちらつかされて頼まれちゃったから、つい――と言って、夕陽まむは口の端をわずかに吊り上げて笑う。

 俺の義兄は、白銀家の次期当主。
 行動基準が「面白いかどうか」の一点だけだとよく言っていて、当主の地位にはあまり価値を見出していないようだった。
 だから、バレたら地位が剥奪されるような危ない行為に手を染めていても、驚きはしない。

 けれど。

「どうして明日だとわかるんだ?」
「ええとね。あなたのおにーさんだけが頭おかしいんじゃなくて、学園長もひどいことを明らかにしてまとめて断罪するためかな。今日、ひよりちゃんの籍が学校にないってハッキリしたあとじゃないと、学園長もワルな証拠がなかったから。生徒の籍をなくすのは、学園長の協力がないとできないことだから」

 学園長を務めるのは俺の義母だ。
 どうやら俺に嫌がらせをし続けてきた義兄と義母のふたりがまとめて断罪されるらしい。

「ま、あたしは実行役だったわけだから、学園に残らせてもらえるかギリギリのところでさ。残れたとしても、男子との接触は禁止されると思うから、今のうちに言いたいこと全部言わせて。そっちも言いたいことあったら言っていいよ?」

 そう言ってまた、夕陽まむは笑った。