夕陽まむを問い詰めても「青空ひよりは死んだのよ」の一点張り。
 学園長を問い詰めても「彼女はもう学園の生徒ではありません」と追い返され。

 重苦しい雰囲気のまま、高2の1学期が始まった。

 夕陽まむは男子に囲まれることをやめ、静かにひとりで過ごしている。
 洗脳を解除したのなら、恋人と引き裂かれたことを悟った男に恨まれてもおかしくないのに、男たちは全くそういうそぶりを見せていない。

 今までの行いを思えば、問題を起こさない夕陽まむはあまりに不気味で。
 夕陽まむに近寄ろうとする人はいないし、青空ひよりの影響がまだ残っているのか、平和になる前の学園のようないじめも今のところは起こっていない。

 というより、みんな青空ひよりロスで精神的に参っていて、授業と課題をこなすのでせいいっぱいなだけかもしれないが。

 青空ひよりはもう学園の生徒ではなく、行方がわからないのは否定しようがない事実。

 学園の生徒ではなくなるなんて、なにかよほどのことがあったに違いない。
 家の手伝いをしなければならなくなったとか、入院とか、それこそ亡くなったとか。

 でも、みんな夕陽まむの「青空ひよりは死んだのよ」という言葉は信じなかった。彼女が死んだとは想像すらしたくないようで、いつか再び会って話すときが来ると信じようとしていた。

 そうでなければやっていけないほど、みんなは青空ひよりという少女に依存しているようだった。