だが、3学期の終業式の日。
 ひとりで帰省の準備をするという夕陽まむと別れ、早くに寮へ帰ると、ルームメイトも旅支度をしていて。

「今日だけでかまいません。少し、お喋りに付き合っていただけませんか」

 流れ作業の寝支度を済ませ、寝るとき用のマスクをつけてぼーっとしていた俺に、ルームメイトは声をかけてきた。

 どうしてか断れなかった。

 頷く俺をじっと見つめる彼女の瞳が、静かに伏せられた。
 何かを押さえ込むように。あるいは、涙を流すように。