なんだろう、この、不気味さは。

 ひっそりした部屋だった。

 作られた生活感とでも言うのだろうか。
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 白銀怜は、普段から、ひよりのことをよく見ていたのだろう。
 毛布のどけ方とか、机の上のペンの並びとか。
 そういう細かなところが、すごくひよりっぽかった。

 当の白銀怜はというと、なにか本を読んでいた。
 声をかける。

「すみません」
「…………なんの用だ?」

 やや伸びた黒髪の隙間から、金色の瞳がちらりとこちらに向いた。

「お願いがあるんです。たとえ青空ひよりが姿を現さなくても、彼女がわたくしたちの幸せを願っていることを思い出して、これから歩いて行けるように」
「断る」

 彼は本のページをめくりながら言った。
 少し揺さぶりをかけてみるか。

「このままの状態で、ひよりの隣に並び立てるとでも? あなたが裏切ったのに?」
「……煽ってまでして何がしたいんだ? 夕陽まむへの接触か?」

 それだけじゃないけれど、その指摘は合っていた。

 夕陽まむは魔族。
 その実力は未知数で、私ひとりでは力で会話を断たれてしまうかもしれない。
 だから、優秀な魔族が、それも心からひよりの情報を求めているひとが必要だった。

「止めておけ。お前は俺と違って、ひより以外にも大切なものがあるだろう」

 そう白銀怜は断言した。

 返す言葉が無かった。