高1から高2にかけての春休みの間に、青空ひよりは白銀学園から姿を消した。

 元凶は夕陽まむ。
 青空ひよりが中学の3年間を費やしてようやく平和になった学園を、たった1年でかき乱した女だ。

 中学から高校へと上がるときに編入してきた夕陽まむ。
 彼女は、恋人や婚約者を持つ男をねらって魔法で洗脳し、逆ハーレムを作り上げたのだ。

 もちろん女子たちも対抗していたが、足りなかった。
 常識的なやり方では、夕陽まむを止められなかった。

 そんなある日。
「春休みに夕陽まむとともに帰省し、彼女を監視する」という計画ができた。
 その計画を提案し、監視役をみずから買って出たのは、青空ひよりだった。

 冬休みのとき「人のプライベートを邪魔するのは良くない」と監視を止めさせたのは青空ひよりだったはずだが、何か心境の変化があったのだろうか。
 今となってはもう、確かめようがない。

 ――春休みが終わり、帰ってきたのは夕陽まむだけだった。