高校卒業してからは、これまで3人の男性と付き合った。
私のほうから好きになることは無かったけれど、ともに過ごしていくうちに私は彼等をちゃんと好きになって、その気持ちに絶対嘘は無かった。
だけど私……夢を見ていた。
その時彼氏が居ても居なくても、私、よく彼の夢を見ていた。
目を覚ました頃にはその夢はもう呆気なく霞んでいき、私の記憶に残ることは無かったけれど、確かに、あの時と同じ彼の温もりがそこにはあった。
◇
「よ。久しぶり」
彼の車に乗り込み、顔を伏せたままバタン、と扉を閉める。
「ちょっと、久しぶりすぎる……」
「はは。ほんまにな、約10年振り?」
「うん。そんくらいやと思う」
「てかさ、ちょっと1個いい?坂下、可愛くなりすぎてビビるねんけど」
「っ…!ありがとう、照れる……」
《───今度ご飯行かへん?》
彼──古野と連絡を取るようになって
一週間が経った頃。
ついに古野からご飯のお誘いが来てしまった。
一向に途切れないメッセージのやり取りに、もしかしたら……って淡い期待はしていたけれど、本当に誘われてしまうなんて。
止まらない奇跡に頭が混乱する。