《──久しぶり。俺の事覚えてる?》
息を呑む。呼吸が止まった。
10年越しの、彼からのメッセージ。
どうして。なんで。
嘘だと思った。夢だと、思った。
この恋は10年前に終わったはず。終わらせた……はず。
連絡先は消していなかった。
正確に言うと、消せなかった。もう二度と会うことは無いと分かっていても、ずっと消せないままでいた。
震える力のまま、私は送信ボタンを押す。
《久しぶり!覚えてるよ》
《よかった〜。元気?》
《ずっと元気やったよ〜!》
《おー、俺もずっと元気やった(笑)》
高校生の頃なんて、視線すら交わることなんて一度も無かったのに。
なにが、起きているの。
こんな奇跡簡単には受け止めきれなくて、彼からのメッセージを何度も何度もスクロールし、確認してしまった。
ただひたすらに好きでいただけだった純粋無垢なあの頃の気持ち。
心の奥底に固めておいたはずの青春が……少しずつ、ゆっくりじわりと溶けてゆく。