伝える言葉を探しているうちに、古野が「なに、どーしてん」と痺れを切らして小さく笑った。



「……最後にいっこ、言いたいことある」

「ん?」



古野がハンドルから手を離す。

もう、知ってさえくれればそれでいいと思った。



「───ずっと、古野のことが好きでした」



声に出して言葉にしてみたら、好きだったあの頃の感情がすぐ手の届く場所にあった。


涙が出そうになったのは、古野に気持ちが届かないからじゃない。


見ているだけで充分だったあの頃。

想うだけで充分だったあの頃。

好きを伝えるなんて私には関係ないことだと思っていた、あの頃。


この気持ちを無かったことにしようとしていた自分に、
ずっと後悔していたことに今更気が付いたからだ。