青春ソング、アニメの主題歌、古野のおふざけデタラメ演歌。
何曲か歌って、気づいたら時刻は日付を超えていた。
お互い何も言わなかったけれど、自然な流れで帰る支度を始めていた。
「ちょー俺の靴下ないって」
「え?あるやろ、布団の中とかちゃうん?」
「えー、……あったわ。ナイス坂下」
ベッドに腰かけて、見つかった片足の靴下を履く古野。
私はもうほとんどの支度を終えて、コートを羽織る。
結局ホテル代の料金も全て古野が出してくれた。
結構な額にビックリして申し訳なくなったけれど、少しだけ、ざまあみろって気持ちを古野の背中にぶつけておいた。
帰りの車はお互い何も喋らなかった。
多分お互い意図的に言葉を発さなかったんだと、なんとなくそう思う。
カーナビからランダムで流れるリンゴマンの歌が全て私の好きな歌だったから、リンゴマンが味方してくれているような気分になった。
近くでいいよって言ったのに、結局古野は家の前まで送ってくれた。