「……んっ、……」



一度離れて、また重ねて。大切なものを扱うみたいに触れ方に、バカな私はまだ勘違いしそうになる。



「……坂下、可愛い」



いよいよ息するタイミングを与えてくれなくなった。角度を変えながら、少しずつ深くなっていく。



「……はぁっ……んっ…」

「……あーちょっとむり、も、限界、……行こ」



余裕を無くしたような、そんな表情。

そのまま車を出て、手を引かれた。


やっぱりこんなこと違うって、掴まれた手を離そうと試みたけれど、抗えなかった。

今この現実に従うことしか、今の私には出来なかった。



ずっと好きだった人。

たまに思い出してしまう人。

夢にまで現れてきて、簡単には忘れさせてくれない人。



これは未練なんかじゃないって、無理やり自分の中で納得させて、知らないふりして。


こんなにも大きくなっていたとは思わずに。