心臓がどうにかなりそうだった。
正直もしかしたら、って、最悪な状況を一切想像していなかった訳じゃない。
だけどそういう関係にはなりたくなくて、どこかで構えてたはずなのに。
古野といるのがあまりにも楽しくて、古野ももしかしたら私と同じ気持ちなのかもって、期待、してしまったんだ。
─── 体 目 当 て 。
心の中で、なぞるように呟いた。
そうしたらあまりにも残酷が目の前に大きくありすぎて、視界の先にあるフューシャピンクに輝くネオンの街中を見つめながら、心の中で力なく笑った。
ここまでだ、と脳の端でもう一人の私が諦めた声を漏らしたような錯覚に陥る。
そして、私の理性が大きく音を立てながら、バラバラと崩れる音が聞こえた。
受けとめるようにして、私は古野を見つめる。
古野の瞳が大きく揺れた。
察した古野は小さく微笑んだあと、指で私の髪を耳にかけ、私は、そのまま目を閉じた。
重なった古野の唇は、優しかった。