「俺が………一華に告白しても文句はなしだからな。」
「え?」
「…………俺が一華に告白しても文句は………」
「いや大丈夫だって。聞こえてる聞こえてる。」
「聞こえててのかよ。なら何か反応しろよ!」
「アハハ…ごめん。」
「いやいいよ。それよりもいいのか?」
「なにが?」
「いやその…俺が一華に告白しても。」
「告白は個人の自由でしょ?」
「いやぁそうなんだけどさ。ちょっと舞希の返事が突っかかってたのがさ。」
「いや。僕は紅希はてっきり海月さんが好きなんだと思って。」
そう聞くと紅希は少し遠くを見ながらいった。
「あいつには好きな人がいるからさ。」
「へぇ~!だれだれ?」
「残念ながらこれ以上はさすがに舞希でも言えないな。」
「えぇ教えてよ〜!」
よかった。いつもの紅希だ。
「あれ?ちなみに沙紀さんのどこが好きなの?」
「ええ〜言っちゃう?」
「言っちゃえ!言っちゃえ!」
「いや~やっぱり小動物っぽいとこかな。」
「え…?沙紀さんって小動物っぽいの?」
「え?あぁそうだよ?玲奈とかもはや好きすぎて一華のグッズとか作り始めてるもん。」
「え…。それは…ちょっと…引くわ。まさかとは思うけど海月さんの好きな人って…?」
「一華じゃないよ。……はぁ、あいつの好きな人は今外国にいるんだよ。」
「あ、そうなの?すごいね〜。留学?」
「ん〜まぁそんな感じ。ずっとそいつの帰りを待ってるんだよ。あいつは。」
楽しそうに語る紅希の横顔はどこか儚げだった。

 「恭平さーん、コーヒー1つー。ブラックで!」
「はいは~い。」
「すいませーん。私アイスティーお願いしまーす。」
今日はいきなり玲奈にカフェに拉致られた。カフェには30代くらいの店員さんがいて、窓からは海が見えた。
「こんなとこにカフェなんてあったんだね。知らなかった。」
「そうそう。いいとこなんだよー。人いないし海見えて私くらい風景きれいだし。」
「風景はきれいだね〜。そういえば店員さん名前で呼んでたけどよく来るの?」
「あぁ恭介さん?洋平のお父さんだよ。あれ?一華は来たことなかったっけ?ここ洋平のお店だよ?」
「え?洋平の?!……あぁそういえばなんか言ってたねぇ。うちカフェやってるみたいなこと。」
「誰も気に留めてなかったけど本人めちゃくちゃ来て欲しがってたよ。」
「アハハ。まさか本人がいなくなってから来ることになるとは。」
「んね。洋平は今元気かなぁ。」
店員さんがブラックコーヒーとアイスティーを机に置きながら言った。
「洋平なんか今度戻って来るってさ。」
「え?まじ?恭介さん!」
「ほんとほんと。でもまたすぐに帰っちゃうらしいんだけどね。」
「やった〜洋平に会える〜。」
「よかったね~。そういえば告白はしたの?」
「今返事保留中なんだよね。留学終わるまで待っててって。」
「そっか。」
「うん。……ってこれにっっが!!」
すると洋平のお父さん…恭平さん?がやってきて笑いながら言った。
「玲奈ちゃんブラックって言ったじゃん。ってか本人の親の目の前でよくそんなこと言えるね〜君ら。」
「いやだってもう私何回も来てるし別に思うこともないから。」
「私は玲奈に流されてです。」 
「おい卑怯逃げんな。」
「いやまぁ大丈夫だけどさ、親としては玲奈ちゃんの親が怖いんだよね〜。洋平はあんなだし。」
「まぁなんとかなりますよ♪それより洋平っていつ来ます?」
「あぁ来週の土曜日に来るって。」
「「えちょっとまって?祭の当日じゃん!!」」
これ…まずくないですか?だって洋平が帰ってきたら祭で玲奈と洋平だけで行っちゃって、そしたら紅希と私と舞希くんだけで行っちゃうことになって…。きっまず。
まじかよー……。玲奈やったとか喜んでる場合じゃないって。私は舞希くんと関われないんだって!
ハァ……チッあのくそ洋平帰ってきたら殺すか。
私は、静かにそう心に決めた。
「とりあえず今日はここまでにしよっか。」
「そうだね〜。すいません、代金を……」
「え?あぁ代金ね。そんなのいらないいらない。」
「え?」
「いや~実はさ2年前までは俺ブラックに勤めてたんだけどさ、俺まさかの宝くじ10億引いちゃってさ」
恭平さんはヘラヘラと笑いながら喋っていたが私達はどこに注目すればいいのか分からない。
「おかげで今はとりあえず売れない喫茶店営んでるし、何よりここきれいなんだよね。海見えるから洋平のことも思い出せるし、あと……まぁこれはいっか。」
私はなんだかんだで洋平の父親なんだなと思った。
「「ありがとうございましたー。」」
私達は自転車をカフェに置かせてもらって、しばらく浜辺を歩いた。
「やはり親と子はにてるものだね〜。」
「そうだね〜。」
私はここで気になっていたことをきいてみた。
「玲奈はいつからここに通い出したの?」
「あぁ洋平が来てすぐかな~。あそこの河原でさ洋平がギター弾いてたのにつられて行っちゃった。」
「そっか〜。私が言うのもなんだけど頑張れ!」
「そうだね。一華が言うのはあれだけど頑張るよ!!」
そう言って玲奈は走り出したから顔は見えなかったけど、なんだかとっても嬉しそうな声をしていた。