暑い。汗が流れ落ちる。これは夏だからでしょうか。はたまた、彼と全く変わらない彼らしき人に会ったからでしょうか。
 休み時間を告げるチャイムが鳴るとみんな舞希くんの席に行って色々と聞き出してた。玲奈が私の席に近づいてきて言った。
「ほんと葉奈くんすごい人気だね〜。っていうか一華汗すごくない?だらだらこぼれてるよ。」
私は無言で女子トイレに行こうと合図した。
 「で、さっきの転校生についてどう思う?」
「え?あぁ葉奈舞希くん?」
「そう。」
「いやぁ…イケメンじゃない?私と釣り合うくらいには。」
「いったん黙れ。雰囲気とかはどう?」
私のただならぬ雰囲気を察したのか玲奈が真剣な顔をして考え始めた。
「雰囲気は不思議くんだよね。天使みたいな優しい感じ。あれで天然だったら爆モテするね。えなに?狙ってんの?」
「狙ってるわけじゃないんだけど、」
「だけど?」
はぁ…私はため息をついて話し始めました。
 私には昔、幼馴染の子がいたのです。よくお祭りにも一緒に行ったりして、一緒に屋台や花火を見たりしたりしてました。楽しかったなあ。そして、小6の頃でしょうか。私が引っ越すことになったのでお別れを告げようとその子に会いに行きました。しかし、私はその子とけんかしてる真っ最中だったので会いに行きづらかったのです。結局私は彼にさよならを言うことはできませんでした。その翌日、彼の住む団地が火事になって、そこに住んでいた、一家が亡くなってしまいました。そしてその幼馴染の名前は葉奈舞希だったのです。
全てを話し終えると、玲奈が口を開いた。
「でも火事になったあと確認はしたの?」
「そのあとすぐに引っ越したから確認できなかった。でも時々小学校のみんなに会いに言ってたんだけどそこで聞いてみたら火事で亡くなったのは葉奈っていう一家だったらしい。」
「じゃあみんなに舞希くんがどうなったか聞いてみたらよかったじゃん。」
「舞希くんは他校の生徒だったの。どこの学校かも分からなかったし。」
「え?じゃあただのユウレイ?こっわ!あ、チャイム鳴る。一旦教室戻ろう。」
「うん。」
教室に戻るとチャイム前にも関わらずみんなはまだ舞希くんの席に集まっていた。舞希くんはみんなに向かってきれいな笑顔で接していた。きっとあの場の半数以上の女子が彼の笑顔に落ちたことでしょう。
 さて、今日1日中彼に近づこうと何度も試みたけど結局近づくことは無理でした。
「一華どうする?どうやって葉奈くんに近づく?」
あれじゃあ近づけそうにもないよと玲奈が呟く。
私と玲奈はもう頭がパンクしそうです。そうだね〜と適当に相槌を打ってると教室に貼り出された花火大会のポスターが目に飛び込んできました。それと同時に私の幼馴染との思い出も次々と浮かび上がってきました。
彼の焼きそばを食べる姿、彼の花火をみてる横顔、あれ?まてよ………
「玲奈…そういえばさ、私の幼馴染の舞希くん、右利きだった。」
「え?」
「あと、目の横にほくろがあった。」
「ん?右目?左目?」
「左目。転校してきた舞希くんにはなかった。」
「えぇ~。じゃあ他人の空似じゃない?」
「うん、そうだね。ごめん。」
「いやいいよ。じゃあ早く帰ろう。」
「うん。」
胸がもやもやする。それでも、もしほんとに幼馴染の舞希くんであって欲しいという思いと、それを無理矢理否定しようとする思いがぶつかり合っている。気持ち悪くなってくる。
 その夜、火事が起きたことを知ったときの夢で目を覚ましてしまった。彼の悲鳴が私を呼んで、とても耐え難かった。
 次の日は珍しく体調を崩してしまったため、学校を休んでしまう事になった。