ここは紛れもない、母さんが入院している病院だった。
長い闘病生活を経て、ついに明後日退院する。
初めて母さんが病気だと知らされた時、目の前が真っ暗になったことを覚えている。
だからこうしてまた、元気に退院できる日がきてくれたことが、心からの喜びなんだ。
「母さん、紹介するね」
そっと、その肩を押す。
そして、大きく息を吸って噛み締めるように声を落とした。
「藍原璃子ちゃん。俺の、大切な人」
「は、初めまして。藍原璃子です……!」
璃子ちゃんは緊張してるのか、俺に続いてたどたどしく挨拶をした。
気が強いのに、意外と繊細で可愛い。
そんな璃子ちゃんを母さんに紹介することが、俺の目的だった。