「それで、寄りたいところって?」


丸い目がきゅるんと俺を見上げる。

昨日、俺がLINEで伝えていたんだ。

〝朝にちょっと寄りたいところがある〟と。


「うん。ちょっと会わせたい人がいるんだ」



***



「ここ……?」


目的地に到着すると、璃子ちゃんが小さく呟いた。

うん、と俺は黙って頷く。


すると──。


「……諒。それに、璃子ちゃん……?」


車椅子に乗った女の人が、その一室のドアの奥から姿を見せた。


「母さん、退院決定おめでとう……」

「ありがとう、諒」


刹那にたまらない気持ちが込み上げて、俺はその人の側まで駆け寄った。