「お待たせーー!」


夏休み。

炎天下の中、遠くから長い髪を揺らしながら一人の少女が走ってきた。

俺は発見するなりすぐに大きく手を振る。


「璃子ちゃん、おはよ」


璃子ちゃん──藍原璃子ちゃんは、俺の高校のクラスメイトだ。

そして──。


「ごめんね〜、せっかくのデートなのに遅くなっちゃって」

「ううん、ちょっと心配はしたけど大丈夫」


俺の、初めての恋人でもある。


明るくて、優しくて、正義感が強い。

困っている人がいると、真っ先に飛び出す。

璃子ちゃんは、俺が今までに出会ったことのないタイプの子だった。


実際、今日だって道探しをしていた人を助けて遅くなったらしい。

だから遅れても怒ってないし、むしろすごいと感心している。

そんなところが、好きになったんだから。