「リビング、あっち?」

「そ、そう……だけど、自分で歩けるからおろして──」

「璃子ちゃんは黙って俺に運ばれたらいーの」


あたしはそれ以上、なにも言えなかった。

ただぎゅっと、雪平くんにしがみつく。


ドキドキしてるはずなのに、不思議にも心はすっごく落ち着つていた。

きっとこの匂いに包まれてるせい。


……甘い。

あたしの好きな、雪平くんの匂いだ。



「ありがと」


リビングにつくと、雪平くんがあたしをソファにそっとおろしてくれた。

なんだか恥ずかしくてちょっと俯いてしまう。



「これ、テーブルに置いておくね」

「うん」


……重たくなかったかな。

つい乙女みたいな心配をしてしまうけど、雪平くんはなんでもないような顔をしてるし、大丈夫だったのかな。