「わー、色気のねぇ声」
「っ、旭!」
思わず足を止め振り向くと、ニヤリと憎たらしい顔をした声の主……旭がなにやら言いたげな様子であたしを見ていた。
知らぬ間に、駅までの道のりの半分まで来ていたみたいだ。
それより。
「……なに?」
なんだか不気味で訊ねてみたら、旭は
「や、別に」
と、濁したように言った。
……くせに。
「雪平と喧嘩したのかなーって、ちょい気になっただけ」
すぐさまそう言って核心をついてくるのは、なんなのか。
〝別に〟という言葉の意味を今すぐ辞書でひいてほしいくらいだ。
「せーかい?」
言い返せず狼狽えていると、旭がずいっと覗き込んできた。