「あれ、璃子ちゃん」

「雪平くん! 電話はもう終わったの?」


店の外へ出るとすぐ、壁に寄り添うように立っていた彼を見つけた。


「うん。今戻ろうと思ってたとこ」


そっか……。


「帰ろ? はいこれ、雪平くんの」

「え、添田さんは?」

「あんなやつもういいの」


自分のと一緒に持ってきた鞄を渡すと返ってきたのは、見るからに驚いた表情。

けれどあたしは気にすることなくその腕を引っ張る。


「お会計いいの?」

「あたしが払っておいたから大丈夫」

「……ちょっと待って」


そう言うと雪平くんは財布からお札を取りだし、あたしの手に握らせた。


「これ、受け取って」

「そんな、いいのに」

「ううん、駄目。彼女に奢ってもらうなんて、俺が許せないから」


……もう、雪平くんたら。


どうしても譲らないといった彼に負けたあたしは、「ありがとう」と受け取って歩き出した。