「愛花〜」
離れたところから陽気に駆けてくる一人の男。
間違いない。
「健太郎……あんたさぁ」
愛花の彼氏、笠井健太郎くんだ。
なんでここに、と眺めているとその視線は何故かこちらに向いた。
「璃子ちゃん、久々」
「笠井くん、元気そうでよかった」
笑いかけてきた彼に同じように笑顔で返す。
中学卒業してから会ってなかったから、あたしが笠井くんを見るのは本当に久しぶりだった。
気さくな雰囲気は健在だけど、ちょっと大人っぽくなったんじゃない?
じいっと観察していると、次第にその目は弧を描いた。
「愛花がいつもお世話になってます!」
「余計なこと言わない!」
「ちょっ、いてー……」
しかしすぐに鋭いツッコミによって、歪められてしまった。
相変わらず愉快な笠井くん。
そんな彼曰く、ここには
〝たまたま近くにいたから来ちゃった〟らしい。