「いいわよ。言いにくいこともあるだろうし。それに……」


……それに?


「なんとなく、そんな気がしていたもの」


フッと軽く笑って見せた桃園さん。

あたしはその妖艶な笑みを、ただ真っ直ぐに見つめる。


「桃園さん……」


憂いを帯びた瞳。

暫くしてその表情がキリッと引き締まったかと思えば、


「あなたが少しでも諒を裏切るようなことをしてみなさい。私が必ず奪ってみせますから」


にこっと口角が上がった。


「ありがとう、桃園さん」


絶対に、大切にするから。

あたしは差し出された手を掴む。


するとその時、流れる空気を切り裂くようにガタッとテーブルの音がして。


「なぁ美織、雪平を諦めたなら俺にもチャンスが──」

「あなた、デリカシーってものがないの?」


キラキラと目を輝かせながら立ち上がった丹羽さんに、当然のごとく鋭い睨みが降りかかった。