「これ、雪平くんの分……」
おずおずと目の前に差し出してみる。
「ありがとう! 朝、作るの大変じゃなかった?」
「ううん。あたしが勝手に作りたくて作っただけだから」
そう。
ただ喜んでほしくて。
なにかしたくて、作ったお弁当。
「迷惑じゃ、なかった?」
そろりと問いかける。
すると雪平くんは一瞬驚いた顔をしてから、柔らかに表情を綻ばせた。
「……なんで? 好きな人が自分のために作ってくれたものだよ? 嬉しくないはずがないよ」
「……っ」
そんな顔が返ってくるなんて、思ってなかった。
全て包み込んでくれるような優しい笑顔に、喉の奥が苦しくなる。
こんなの困るって、いらないって、そう思われたらどうしようって。
いつの間にか、心のどこかで怖がってしまっていたから。