真夏くんは少しだけ腕の力を緩めて。

私の顔をのぞきこむ。

真夏くんがほんの少し体を離したことで、真夏くんの着ていたTシャツに私の涙のシミが出来ていたことを知る。



「ごめん、Tシャツ」

「いいよ、そんなの」
と、真夏くんは私の目をしっかり見ている。



「昨日も言ったけれど、オレはすみれちゃんの味方なんだから。ずっとそばにいるんだから。すみれちゃんのこと、避けたりなんかしないよ」



片手を私の頬にそっと当てて、親指で涙の粒を拭う真夏くん。



理由なんて。

たったひとつなんだよ。



(とうとう、言う時が来てしまった)



言わずにいられるなら、と思っていたけれど。

そんなことをしたら、やっぱり私、ズルいよね?



今更ながら、鼓動が速くなる。

緊張と不安。



(振られるとしても、この気持ちがちゃんと伝わりますように)



目の前にいる真夏くんを見つめて。

私は大きく息を吸った。