「ねぇ、離してよ」

「今は離したくない」

「何言ってんの、真夏くんの言っていることとやっていること、なんかちぐはぐだよ」



真夏くんが「それでも離したくない」と、私をぎゅっとする。



それから、
「なんでそんなにキスしたいって言うの?」
と、真夏くんが尋ねてきた。



真夏くんがどんな表情をしているのかは、わからなかった。

強く抱きしめられていて。

私は真夏くんの胸に顔をうずめるような体勢なので、真夏くんの顔が見えない。



「理由なんて、聞いてどうするの?」

「聞きたいよ」

「どうして? どうせキスするつもりなんかないくせに」

「……」



真夏くんが黙った。



(こんなはずじゃなかったのに)



ケンカになっちゃった。

仲良くしていたいのに。

今日、この部屋を出たら。

またしばらく会えない日が続くのに。



「キスしたい理由を話しても……、私のこと、これから先、避けたりしない?」