そんな私を見て、真夏くんは私を抱きしめた。
「やめて」
と、私は真夏くんの腕の中でもがく。
「好きでもない女の子のこと、そうやって抱きしめるの、やめたほうがいいよ」
「なんでそんなことを言うの?」
「なんでって……、私みたいに勘違いしちゃうから。期待しちゃうじゃん」
「だから離して」と真夏くんを見ると、
「すみれちゃん、さっきからオレの気持ち、無視しているよね?」
と、真夏くんが珍しく不機嫌な声で言う。
「むしろ真夏くんの気持ちを尊重しているつもりなんだけど」
泣きながら、私はだんだんイライラしてきた。
「本当に?」
「真夏くんがキスしたくないってわかって、はい、そうですかってちゃんと引き下がったよ?」
「……わかってないよ」
「わかっているよ、ちゃんと」
真夏くんから離れようとして私は体をよじるけれど、真夏くんは腕の力を強めて、離してくれない。