真夏くんは鳩が豆鉄砲を食らったような表情で、私をまじまじと見つめ返した。
「えっと……、すみれちゃん?」
「ここに来た日にも言ったよね? キスしたい。真夏くんにキスしてほしいんだ。お願いだから、私にキスして」
真夏くんは次第に顔を赤くして、
「そんなキスキス、連呼しないで」
と、慌てている。
「正直言うと、強引に真夏くんにキスすることも考えてはみたけれど」
「何言ってるの!?」
「それはやっぱり私としても、ちょっと……」
「うん、そうだよね!?」
その時。
真夏くんがコホンと咳払いしてから、
「すみれちゃん、キスは……その、お互いに好きだって気持ちを確かめ合うものっていうか」
と、言った。
「えっ?」
「いや、『えっ?』じゃなくて。気持ちのこもった行為でしょう?」
「…………」
「すみれちゃん?」
「……真夏くんと」
と言った私の声が震えてしまった。
「真夏くんと私のキスは、つまり、気持ちのこもっていないキスになるの?」
「……えっ」