「……すみれちゃん? 植物相手に百面相してどうしたの?」
気づくと真夏くんが不思議そうに私を見ていた。
「えっ!? ううん、何でもないよ!」
と、とりあえず誤魔化す。
(キスするのって、本当に大変なんだな)
強引に唇を奪うこともちょっと考えたけど、やっぱり、そんなことはしたくないし。
でも待っているだけなら、この先ずっと、キスすることなんかなさそうだし。
「真夏くん」
「ん?」
私は真夏くんをまっすぐ見た。
真夏くんは大事な話だと察したのか、私のそばに座って、目線を合わせてくれる。
(言うしかない)
「私ね、真夏くんとしたいことがあるの」
「うん、何だろう?」
(頑張れ! 高野 すみれ!!)
私自身を全身全霊で応援して。
私はついに言った。
真夏くんをまっすぐ見つめて。
「私、真夏くんとキスがしたいんだ」
「……えっ?」