「私、別に怒ってないもん」
「本当に?」
「それに嫌な気持ちになんかならない。もし嫌なら、一緒のベッドで眠ったりなんかしない」
「……」
「嫌だと思う人に、そもそも同居しようなんて提案しない」
「それは……」
真夏くんは「でも」とか、「いや、本当に」とか、モゴモゴ言いつつ、
「ごめんね」
と、また頭を下げたので、
「それ以上謝ったら、逆に傷つくから」
私は頬を膨らませた。
ふたりで順番に洗面所に行って身支度を整えて。
一緒に朝ごはんを食べた。
「真夏くんのごはん、本当に美味しいよね」
と、半熟の目玉焼きを口に運ぶ。
美味しい、美味しいともぐもぐ咀嚼しつつ、頭の中では焦っていた。
(もう、今日は帰らなくちゃ)
明日は大事な取材がある。
取材の打ち合わせもあるから、午後にはここを出なくちゃ。
(それまでに、真夏くんに告白してキスしなくちゃ)