「すみれちゃん、なんか顔、赤くない?」
「真夏くんのせいだもん」
「え? オレ?」
真夏くんのお腹あたりに抱きついて、顔をうずめる。
「わっ、こら、すみれちゃん! くすぐったいから!」
「えー、くすぐったいんだー?」
頭を左右に揺らして、わざとくすぐる。
「やめっ、ちょっ、ドライヤーがしにくいよ」
真夏くんはドライヤーを止めて床に置いた。
空いた両手で私の髪の毛を撫でる。
「風邪引くよ?」
「引いてもいいもん」
真夏くんは「あはっ」と笑って、
「明日、髪の毛がぐしゃぐしゃのすみれちゃんが見れちゃうかもね」
なんて、珍しく意地悪なことを言った。
私は真夏くんを抱きしめたまま見上げて、
「ドライヤーでちゃんと乾かしたら、またぎゅってしてもいい?」
と、尋ねた。
きっと「ダメ」って言われるんだろうと思っていたけれど、真夏くんは、
「いいよ」
と、笑顔で言ってくれた。