福田さんとの電話を切り、私は真夏くんの背中を見つめた。



(……もし、真夏くんの心の中に、他の誰かがいたらどうしよう)



そうだったら。

真夏くんとの初キスが叶わないより、つらいことかもしれない。



真夏くんの特別でいたい。

一番近くにいたい。

私だけを見てほしいの。



(……あっ、やばい)



不安な気持ちが渦巻くように、私にまとわりつく。



自分の両腕をさすって。

私はその場にしゃがむ。



(大丈夫、大丈夫だから……)



心の中で唱えるけれど、全然(おさま)らない。



やだな。

真夏くんに見られたくないのに。



呼吸が少し荒くなってきて、ますます焦る。

ほんの少し、寒さも感じてしまう。



真夏くんが振り返った。



「!! ……ごめん、すぐ治ると思うから」

「すみれちゃん? 大丈夫なの!?」

「大丈夫だから、今は放っておいて……」